縫い穴づくりは、自分の道づくり。
ブックカバーの制作を進めています。
革を手縫いするためには、事前に穴を開ける必要があります。この写真にある革の右端が縫い穴を開けた状態。普通は左二つの菱目打ちという道具とトンカチを使いますが、音と振動が気になるので、今は菱錐(菱ぎり)で一目一目開けていきます。
ミシンだと、ダダダっと縫う時にまっすぐするように意識する。
布の手縫いでも、縫う時にまっすぐを意識する。
それが、革の手縫いの場合は、勝手が違うのです。
まっすぐ縫えるかどうか、縫い目が綺麗になるかどうかは、縫い穴を開けた時点で半分以上決まってしまいます。しかも、やり直しがきかない。
僕には、この縫い穴が、道のように見えるときがあります。一目一目、慎重に、自分なりのペースでリズミカルに穴を開けて行くと、そこには道ができます。その道がまっすぐであればあるほど、同じ菱の形が綺麗に並んでいればいるほど、僕は縫う時に、その道を、もっともっと楽に歩ける。
そんな時に、歓びすら感じます。
それが、誰かが事前に開けてくれた縫い穴だとどうか。その道がどれだけまっすぐだとしても、どれだけ舗装されて綺麗な道で歩きやすかったとしても、その道を歩いて行く歓びは少ないかもしれないな、と思います。
自分の道は自分でつくる。
自分で作った道なら、ちょっとぐらい苦労して汗かいたとしても、いいじゃないですか。今まっすぐな道をつくれなくても、いいじゃないですか。
他人がつくった社会の常識という道に答えはなくて。自分でつくった道だからこそ、その先にある景色をもっと楽しめるのだと思います。
そんな無駄に壮大なことと現実を行き来しながら、縫い目をつくってたりします。